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藤棚市電物語 7番の市電と女優さん

<2017年 第54号>

 2月号に掲載した市電の記事にご協力いただいた郷土史家の田村泰治さんから、藤棚を通る市電に素敵な思い出を持つ方がいるとの情報があり、早速お尋ねしました。


 霞橋のたもとにある齋藤米店の齋藤光司さん、84 歳。お神輿歴 45 年、藤棚の「へそ祭り」でもご活躍です。「子供の頃、霞橋の上の一本松通りは、軍人さんや神中の学生さんで大賑わい。藤棚方向から飛んでくるギンヤンマの群れをみんなでトリモチで捕りました」。


 空襲で焼かれ、疎開先から戻り、専修大の夜学に通っていた帰り道、7番の市電に乗るために横浜駅の電停で待っていると、美しい女優さんと出会ったそうです。「週に2、3回、同じ市電で久保山まで。お互い 20 代前半、綺麗な方でしたよ」と齋藤さん。女優 さんはなんと、若き 日の岸恵子さんでした。「いつも夜の9時頃、蒲田の撮影所帰りだったんでしょうね」。仕事で久保山のアンコ屋さんへ薪を届けに行った折、「お付の人と坂を下りて来られる姿を時々お見かけしました」。そして後に岸恵子さんは、大ヒット映画「君の名は」のヒロインとなり大女優となります。「雪が降って寒くて吹雪でも、ちゃんと市電を待っておられましたよ」。


 美しい青春を乗せて藤棚を走り抜けた7番の市電。大ブームとなった「真知子巻き」を一番最初に見たのは、齋藤さんだったのかもしれませんね。


写真提供しでんの学校

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